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カスハラ対応が義務化する?企業が行うべきこととは

労働施策総合推進法が改正され、2026年中には全企業へ「カスタマーハラスメント対策」が義務付けられます。従業員を守るためのカスハラ対策が今後企業の責任となりますので、法令に沿って取り組みをスタートさせなくてはなりません。
そのために事業者が押さえておくべきポイントを解説していきます。

どこからがカスタマーハラスメントか

「カスタマーハラスメント」は、厚生労働省が示す指針等において、次の3つの要素すべてを満たすものとされています。

顧客・取引先・施設利用者その他の利害関係者が行う、社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害すること。

ここで重要なのは、単なるクレームや正当な要求はカスハラに該当しないという点です。商品に不備があった場合の交換要求、サービスに問題があった際の改善要求は、その手段や態様が常識的であるならカスハラとはなりません。

「判断基準の設定」が大きな課題

ハラスメントが疑われる行為があったとして、「それが本当にカスハラに該当するのかどうか」の判断は難しく、多くの企業が悩むポイントでもあります。

実際、厚生労働省が公表する調査結果でも「迷惑行為と正当なクレームを区別する明確な判断基準を設けることが難しい」「社内で統一のルール等はなく、現場で個別に対応している」という実態も多く見られています。
参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001454169.pdf

そこでまずは、判断の指針を設け組織内に周知することが必要になるでしょう。ここで重要な考え方がこちらです。

  • 主張や要求に正当な理由があるか
    → まずは事実関係を確認し、自社に過失があるか、顧客の主張に根拠があるかを検証。根拠のない言いがかりであるなら、要求に正当性がないと判断できる。
  • 要求を実現する手段や態様が相当か
    → たとえ自社に過失があっても、長時間にわたる拘束や、暴力的・威圧的・侮辱的な言動、繰り返しの要求などは、社会通念上相当ではない。

企業に求められる具体的な対策

ここからは、改正法に沿って事業者が取り組まないといけない具体的な内容について取り上げていきます。

事前準備として行うべき対策

実際にカスハラが発生してから何か行動を起こすのではなく、その前段階から以下の内容に取り組む必要があります。

対策事項対策の内容
基本方針の明確化と周知組織トップからのメッセージとして「カスハラから従業員を守る」姿勢を示し、社内マニュアルや社内掲示板などで周知する。
相談体制の整備相談窓口や報告フローを設け、現場の従業員からスムーズに社内で共有できるように備える。相談者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止も徹底する。
対応マニュアルの策定カスハラの定義、判断基準、対応フローなど、具体的な対処法を文書として取りまとめる。 顧客への初期対応から、エスカレーション、記録方法までを明記しておくと良い。
従業員への教育全従業員(アルバイト含む)に対し、対応マニュアル・社内ルールや相談窓口の利用方法に関して教育・研修を実施する。

一度整備した後も、実際に社内で発生した事例を踏まえて、より実効性の高いものへと更新していきましょう。

実際に発生した際の対応

カスハラが発生したときには、次の流れで対応することが求められます。

まずは「事実確認」です。複数人で行い、記録を残しましょう。対応者の主観だけで判断せず、第三者(店長などの管理職)が客観的に判断する体制が重要です。

加えて「従業員の安全確保」も必要です。カスハラの行為者と従業員を引き離し、複数人で対応に当たります。状況によっては警察へ通報することも視野に入れるべきでしょう。

次に「被害を受けた従業員に対するフォロー」となる措置を講じます。必要に応じてシフト変更や配置転換なども検討します。

最後に「再発防止策を検討」します。同様の事案が起きないよう対策を講じるとともに、社内で事例を共有して組織的な学習につなげることが重要です。

対策を怠った場合のリスク

カスハラ対策を講じなかった場合の、企業にとってのリスクを考えてみましょう。

1つは、改正法に従わなかったことに対する法令上のペナルティが挙げられます。
行政からの助言・指導・勧告を受けたり、事業主名が公表されたりする可能性もあります。こうしたペナルティを通じて社会的信用を大きく損なう危険性があります。

次に、従業員からの損害賠償請求を受けるリスクも挙げられます。
事業者が適切な対応を取らず安全配慮義務違反が認められると、被害を受けた従業員から損害賠償請求を受けることになるかもしれません。

そして、人材の流出というリスクも挙げられます。
カスハラから従業員を守れない企業は、労働者から選ばれなくなります。従業員の離職率上昇や採用難を引き起こし、その状態が続くと競争力の低下を招いてしまいます。

今からカスハラ対策に取り組もう

厚生労働省では「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」など有用な資料が公表されています。また、自社の実体に即した対策を講じるためには弁護士に相談しながら体制を整えていくことも効果的でしょう。

従業員が安心して働ける環境を整備し、法令遵守を徹底することが、企業の持続可能性を高めることにもつながります。法改正によりカスハラ対策が義務となったことを踏まえ、取り組みを始めましょう。