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待機時間にも給料の支払いが必要?判断方法や企業が取るべき対策を解説

企業側が「この待機時間に給料は発生しない」と考えていても、その時間が法的に労働時間と評価されるときは給料の支払いが必要となります。
ではどのような場合に待機時間が労働時間と評価されるのでしょうか。
当記事で、待機時間について企業の方が知っておきたいポイントを解説していきます。

待機時間が労働時間と評価されるケース

待機時間が労働時間として評価されるのは、基本的に「使用者である企業の指揮命令下にある」といえる場合です。
たとえば以下のような事情があるなら待機時間中でも労働時間と評価される可能性が高くなります。

  • 指示を受けるとすぐに業務に取り掛からなければならない場合
  • 特定の場所で待機しなければならず、作業に着手できる準備が必要な場合
  • 警報や電話等にすぐ対応することを義務付けられている場合 など

このような事情があるときは、職場内にいる場合のほかさまざまなシチュエーションで労働時間が発生します。
タクシー運転手が乗客を待っている時間やトラック運転手が荷物の搬入を待っている時間、在宅ワークのため自宅にいる時間であっても留意しなくてはなりません。
緊急対応が求められる場合など、状況によっては仮眠中でも労働時間に該当する可能性があります。

待機時間が労働時間と評価されないケース

一方で、労働者が次のような状況にあるときは待機時間が労働時間とは評価されにくいです。

  • 待機時間中、使用者から特段指示や拘束を受けず、テレビを見たり寝たり入浴したりするなど自由に過ごすことができ、外出についても特段制限されていない場合
  • 待機中に発生する可能性のある緊急業務の頻度が極めて低く、実際に発生した場合でも即時対応や迅速な対応を義務付けられていない場合
  • 「会社からの連絡が取れさえすれば、何をしていてもいい」といわれ自宅待機している場合

ただし、実際の判断ではさまざまな事情を総合的に考慮する必要がありますので要注意です。
たとえば、会社からの連絡頻度が高く実質業務を続けているような状況だと労働時間と判断されてもおかしくありません。

待機時間が原因で起こり得る労働問題

待機時間に関しては、以下のような労働問題が発生する可能性があります。
そのため使用者である企業側は、現状発生している待機時間について一度見つめ直すことが大事です。

未払い賃金請求訴訟の提起労働時間とされる待機時間中の給料が支払われていないことを理由に、訴訟を提起されるリスクがある。数年分の未払い賃金が発生していると大きなダメージを受ける。
健康被害と安全配慮義務違反実質労働時間となっている長時間の待機があると、従業員に過度の負担がかかり、健康被害につながる可能性がある。 これに伴い事故リスクも高まり、企業の安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性も出てくる。
36協定違反待機時間が労働時間と認定されると、36協定の時間外労働の上限を超過する可能性がある。その場合は割増賃金の支払いのみならず法令違反を理由とする行政処分や刑事罰のリスクも生じる。

企業が取るべき対策

待機時間をめぐる問題については、企業は以下3つの対策に取り組むことを検討すると良いでしょう。

  1. 待機時間と休憩時間の区別を明確にする
  2. 労働時間となる待機時間があるときはその記録・管理体制を整備する
  3. 待機時間そのものを減らす

これら各アプローチについて説明します。

待機時間と休憩時間の区別を明確化

待機時間の取り扱いについて曖昧にならないよう、就業規則や社内規程等でその過ごし方等を具体的に定めましょう。

たとえば「休憩時間は完全に労働から解放され自由に利用できる」と明記し、その間は実際にも業務対応させないよう徹底します。

一方、自宅待機であっても「所定労働時間中は会社からの連絡に応じられるよう求められ、指示があれば直ちに出社または業務開始しなければならない」という状態の場合、それは法的にも労働時間として評価される可能性が高いため、その旨従業員にも周知して給料の支払いも適切に行う必要があります。

待機時間の記録・管理体制を整備する

待機時間が労働時間と評価される場合、その時間に見合った給料の支払いが必要です。
適切に支払いを行うためにも待機時間の記録・管理を行わなければなりませんので、システムを導入するなどしてその体制を整えましょう。

職場のタイムカードのみで管理するのではなく、外出先や自宅からも記録ができるようにクラウドシステムを取り入れるなどすると効果的です。

待機時間そのものを減らす

待機時間そのものを減らすことが根本的な解決となります。
企業としても給料の支払いの負担が減らせますし、従業員からも不満が出にくくなります。

例としては、効率的な作業を実現するために「クラウドシステムの導入」「ローテーション体制の最適化」「緊急時の対応フローの構築」などが効果的といえます。
ただし待機時間を減らすにはその業務の性質に合わせた工夫が必要で、実際の対策内容は千差万別です。
自社における労働環境をあらためて確認したうえで対応にあたると良いでしょう。