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就業規則の不利益変更を行う場合の注意点

就業規則の変更で従業員が不利益を受ける場合、手続きは慎重に進める必要があります。
まずは法令遵守を徹底すること、その前提のもと、従業員が受ける影響にも配慮しながら丁寧な対応を心がけましょう。
不利益を伴う就業規則変更の行うときに押さえておくべき法的要件や実務上の注意点をここでチェックしてください。

不利益変更で守らないといけないルール

最低限のルールを守ったうえであれば、労働条件の変更自体は認められています。労働契約法でも次の規定が置かれています。

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

引用:e-Gov法令検索 労働契約法第8条
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128

ただし会社と従業員の関係は法令で厳しく規律されていますので、以下に掲げるルールは必ず守らないと変更が有効とはなりません。

労働基準法を下回る水準にはできない

大前提として「労働条件に関しては労働基準法の内容を下回ることができない」ということを守らないといけません。

たとえ従業員が同意していたとしても、労働基準法所定の基準を下回る労働条件、例えば最低賃金を下回る給与の設定などは定められません。
最初の雇用契約締結時もそうですし、その後の不利益変更に際しても変わりはありません。
最低限そのルールを踏まえて雇用契約や就業規則の内容を検討しなくてはならないのです

意見聴取の手続きが必要

労働基準法第90条では、就業規則の変更に際して会社は以下の者から意見を聴かないといけないと定められています。

  • 労働組合(労働者の過半数からなる労働組合があるケース)
  • 労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数からなる労働組合がないケース)

要件を満たせば労働組合との手続きを行いますが、そうでない場合には従業員側で過半数を代表する者を選出し、説明会を実施するなどして変更案を伝えましょう。
そして適法に手続きが行われたという事実を示すためにも、聴取した意見は「意見書」としてまとめておきましょう。

就業規則の周知と合理性が求められる

労働契約法で条件の変更自体は認められているものの、その変更内容が従業員にとって不利益なものの場合は「従業員との合意」に基づいて行わなければなりません。

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

引用:e-Gov法令検索 労働契約法第9条前段
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128

ただし例外があり、以下2つの要件を満たすときであれば不利益変更も法的に有効なものと評価されます。

  1. 変更後の就業規則を従業員に周知する
  2. 変更内容が以下の内容に照らして合理的である
    ・従業員が受ける不利益の程度
    ・条件変更を行うことの必要性
    ・変更後の就業規則の内容が相当であること
    ・労働組合等との交渉の状況
    ・その他就業規則変更に係る事情

労働基準監督署への届出

給与や労働時間、休日など重要な労働条件についての就業規則変更があった場合、行政官庁(労働基準監督署)に届出をしないといけない旨が労働基準法に定められています。

届出は窓口で行うほかに、郵送、電子申請(e-Gov)も認められています。

就業規則変更届と意見書、そして変更後の就業規則を、提出用と会社控え用で2部ずつ準備しておきましょう。
なお、郵送の場合はそれらの必要書類に加えて返送用の切手と封筒、送付状も添えます。

実務上の注意点

就業規則の不利益変更を行う際には法令上の要件を満たすだけでなく、実務上は次の点への配慮も重要です。

注意点具体的な対応
丁寧な説明と対話・変更の必要性や内容、具体的な影響について詳細に説明を行うこと。 ・経営状況や将来の見通しも含めて具体的に説明すること。 ・従業員からの質問や懸念点に誠実に対応すること。
代替措置の検討・不利益を緩和するための代替措置を検討すること。 ・必要に応じて段階的な措置なども検討すること。
公平性・合理性の確保・変更の対象や方法について公平性を確保すること。 ・変更内容の合理性を示すこと。
モチベーション維持への配慮・変更後の従業員のモチベーション低下に注意すること。 ・将来的な労働条件改善の可能性にも言及すること。

就業規則の不利益変更は従業員の生活にも影響が及びうる問題です。法令遵守はもちろんのこと、それ以外の面にも十分配慮することで、従業員との信頼関係を維持しながら円滑な変更を実現することができるでしょう。